暖かい雨と冷たい雨

暖かい雨

温度が0℃以上で,雲粒が氷晶ではなく水滴だけの雲の中で成長して降る雨のことを「暖かい雨」といいます.

雲粒まで成長する場合凝結過程
雨粒まで成長する場合併合過程

冷たい雨

氷晶が成長して降る雨のことを「冷たい雨」といいます.

中高緯度で降る雨の多くは「冷たい雨」です.

過冷却水滴が蒸発して水晶が成長する場合水蒸気の昇華凝結過程
過冷却水と水晶がある場合ライミング
水晶が落下によって成長する場合凝集過程

雲粒と凝結過程

水滴が成長して大きくなったものを雲粒といいます.

代表的な雲粒は半径が $10 \mu m$ ほどです.

このように,空気が過飽和状態になり,水滴の核となるエアロゾル(=凝結核)の周囲に水蒸気が凝結して水滴が出来,その水滴に周囲の水滴が凝結して水滴が成長していくことを凝結過程(拡散過程)といいます.

併合過程

大きな水滴と小さな水滴があった場合,大きな水滴のほうが小さな水滴よりも落下速度が大きくなります.このように,大きな水滴のほうが小さな水滴よりも落下速度が大きくなるというのは空気抵抗があるためです.空気抵抗がない場合は,水滴が大きかろうが小さかろうが落下速度は同じになります.

そこで,大きな水滴が落下の途中で小さな水滴を次々と吸収して,より大きな水滴(雨粒)へと成長していくことを併合過程といいます.

空気抵抗がある場合の落下運動

ガリレオ・ガリレイはピサの斜塔での実験から,「物体の落下速度は,その物体の重さによらずに一定である」ということを明らかにしました.

いま,重力加速度を,\[g=9.8 [m/s^{2}]\]とします.

ここで,物体の $t$ 秒後の落下速度を $v=dy/dt$ とすると,\[v=gt\]と表されます.

上の例では空気の存在を無視していました.そこで,次に落下していく物体に空気抵抗 $D$ が働くということを考えます.すると,物体の運動方程式は,\[m\frac{dv}{dt}=mg-D\]と表されます.

ここで,高速流体中の物体が受ける抵抗力は流体の密度 $\rho$,(相対)速度の2乗 $v^{2}$,物体の断面積 $S$ に比例するというニュートンの抵抗法則(Newton's law of resistance)によると,抵抗係数を $C$ として,物体に働く抵抗力 $D$ は,\[D=C\frac{\rho v^{2}}{2}S\]となります.

物体の断面積 $S$ は球体の場合,\[S=\pi r^{2}\]となります.従って,\[D=C\frac{\rho v^{2}}{2}\pi r^{2}\]となります.

続いて,抵抗係数 $C$ を検討します.

まず,オズボーン・レイノルズ(Osborne Reynolds,1842〜1912)が導入した流れのパターン(層流,乱流)を表現するレイノルズ数(Reynolds number)を考えます.

レイノルズ数(Reynolds number)は,流体の粘性率 $\eta$ ,物体の大きさ $L=2r$ として,慣性抵抗と粘性抵抗の比(無次元数)\[Re=\frac{慣性抵抗}{粘性抵抗}\]\[Re=\frac{\rho v^{2} L^{2}}{\eta v L}=\frac{\rho v L}{\eta}\]として表されます.

球体の抵抗係数はレイノルズ数を用いて,層流領域($Re < 1$)のときは,\[C=\frac{24}{Re}\]遷移領域(1 \leq Re < 2975)のときは,\[C=\frac{24}{\sqrt{Re}}\]乱流領域($Re > 2975$)のとき,\[C=0.44\]と表されます.

層流領域の場合($C=24/Re$)を考えると,\[\begin{align}D&=\frac{1}{2}\frac{24}{\frac{2r \rho v}{\eta}}\rho v^{2} \pi r^{2}\\ &=6 \pi \eta r v\end{align}\]となります.

この関係式をストークスの法則(Stokes' law)といいます.アイルランドの数学者にして物理学者のストークス男爵(Sir George Gabriel Stokes, 1st Baronet,1819年8月13日〜1903年2月1日)に因むものです.

ベルヌーイの定理

流体はその流れの各点で,高さによる位置エネルギー,速度による運動エネルギー $\frac{1}{2}v^{2}$,圧力エネルギーを持っています.

これらのエネルギーは相互に変化をするものの,総量は保存されます(エネルギー保存の法則).

それぞれのエネルギーを水 $1kg$ 当たりで考えると一定になるということを示したものがベルヌーイの定理[Bernoulli's principle]という.

Mathematics is the language with which God has written the universe.





















太陽系と惑星 - 暖かい雨と冷たい雨 - 大気の安定・不安定 - 温位 - 水蒸気の量