公理的集合論の公理

理論の出発点として使う命題,つまり,命題を導きだすための前提として導入される最も基本的な仮定のことを公理といいます.そして,一連の公理の集まりを公理系(Axiomatic system)といいます.

集合の公理系としては以下のツェルメロ=フレンケルの公理系(ZF;Zermelo=Fraenkel)があります.

外延公理を除く公理は「集合 $x_{i}$ が与えられたとき,これらの $x_{i}$ から $\cdots$ という性質を持つ集合をつくることができる」という存在公理となっています.

  1. 外延公理 axiom of extensionality
    全く同じ要素からなる2つの集合は等しい.\[\forall z(z \in x \Leftrightarrow z \in y) \to x=y\]
  2. 対公理 axiom of pairing
    任意の二つの元 $x,y$ に対し,$x$ と $y$ のみを要素とする集合 $z$ が存在する.\[\forall x \forall y \exists z \forall u [u \in z \Leftrightarrow (u=x \lor u=y)]\]対の公理で存在が保証された集合 $z$ を $\{x,y\}$ と表されますが,$x=y$ のときは,シングルトン(singleton)の $x$ と呼んで $\{x\}$ と表します.
  3. 和集合公理 axiom of union
    任意の集合 $x$ に対しある集合 $y$ が存在して,任意の集合 $z$ に対し,$z$ が $y$ に含まれるならば,そのときに限り $z$ を含むような $x$ の要素 $u$ が存在する.
    つまり,任意に与えられた集合族の和が再び集合になります.\[\forall x \exists y \forall z(z \in y \Leftrightarrow \exists u[u \in x\land z \in u)]\]
  4. 空集合の公理 axiom of empty set
    要素を一つも持たないような集合が存在するということ.あるいは,いかなる集合も含まない集合が存在するということ.\[\exists x \forall y \lnot(y \in x)\]
  5. 分出公理 axiom of separation
    任意の集合 $A$ と,ある集合に関する性質 $P(X)$ に対して,$A$ の元で,$P(x)$ という性質を満たすような $x$ 全体は集合となるということ.\[\forall a \exists b \forall x[x \in b \Leftrightarrow x \in a \land P(x)]\]
  6. 無限公理 axiom of infinity
    集合 $x$ において,空集合 $\emptyset$ を元として含んでいて,すべての $y \in x$ に対して,$y \cup \{y\} \in x$ となるものが存在するということ.\[\exists x \forall z[\emptyset \in z \land \forall y(y \in x \Leftrightarrow y \cup \{y\} \in x)]\]
  7. 冪集合公理 axiom of power set
    どんな集合 $x$ に対しても $x$ の部分集合全てからなるような集合が存在するということ.\[\exists y \forall z(z \in y \Leftrightarrow z \subseteq x)\]

以上が ZF と呼ばれる公理です.これに,

選択公理 axiom of choice
空集合を要素として含まないような任意の集合 $x$ に対して,$x$ から $\cup x$ への写像 $f$ で $f(x) \in z$ が全ての $z \in x$ に対して成り立つような集合が存在すること.
つまり,$x$ をそのどの元も互いに交わらないような空集合でない集合とするとき,$x$ の各元から一つずつとってきたような集合が存在すること.\[\forall x \forall a \exists f[f \in \cup a \land \forall x(x \in a \land x \neq \emptyset \to f(x) \in x)]\]

ZFと選択公理を足したものを ZFC といいます.

現代集合論ではさらに2つの公理が仮定されます.

  1. 正則性の公理 axiom of regularity
    空でない集合は必ず自分自身と交わらない要素を持つということ.ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)によって1925年に導入されました.\[\forall x[x \neq \emptyset \to \exists y(y \in x \land x \cap y = \emptyset)]\]
  2. 置換公理 Axiom of replacement
    この置換公理は分出公理の拡張になっています.
    論理式 $\varphi(x,y)$は $y_{1},y_{2},t$ を自由変数に持たないとして,\[\forall x \forall y_{1} \forall y_{2}[\varphi(x,y_{1}) \land \varphi(x,y_{2}) \to x_{1}=x_{2}] \]\[\to \forall s \exists t \forall y[y \in t \Leftrightarrow \exists x \in s(\varphi(x,y))]\]

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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