Point:
二項分布は固定された試行回数内の成功回数をモデル化するものであり,負の二項分布は固定された成功回数に達するまでの失敗回数をモデル化したものである.
二項分布の確率質量関数は,\[P(X = x | n, p) = \binom{n}{x} p^x (1-p)^{n-x}\]一方,負の二項分布の確率質量関数は,\[P(Y = y | r, p) = \binom{y + r - 1}{y} p^y (1-p)^r\]負の二項分布の確率質量関数は,以下のように二項分布の確率質量関数と関係づけることが出来る.\[P(Y = y | r, p) = \binom{y + r - 1}{y} p^y (1-p)^r\]つまり,負の二項分布の確率質量関数は,二項分布の試行回数 $n$ と負の二項分布の成功回数 $r$ が等しく($n = r$),かつ,二項分布の成功回数 $x$ と負の二項分布の成功回数 $y$ が等しい($x = y$)場合に二項分布の確率質量関数と等しくなる.
例えば,成功確率 $p$ のコイントスを考える.二項分布を用いて10回の試行で3回成功する[表が出る]確率は次のように計算される.1回目が表,2回目が裏,3回目が裏,4回目が裏,5回目が裏,6回目が表,7回目が裏,8回目が裏,9回目が表,10回目が裏という場合である.\[P(X = 3) = \binom{10}{3} p^3 (1 - p)^7\]成功確率を $p = 0.5$ とすると,\[P(X = 3) = \binom{10}{3} (0.5)^3 (1 - 0.5)^7\]二項係数 $\binom{10}{3}$ は,\[\binom{10}{3} = \frac{10!}{3!(10-3)!} = \frac{10!}{3!7!}\]ここで,\[10! = 10 \times 9 \times 8 \times 7 \times 6 \times 5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 3628800\]\[3! = 3 \times 2 \times 1 = 6\]\[7! = 7 \times 6 \times 5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 5040\]であるから,\[\binom{10}{3} = \frac{3628800}{6 \times 5040} = \frac{3628800}{30240} = 120\]よって,\[P(X = 3) = 120 \times (0.5)^3 \times (0.5)^7\]\[P(X = 3) = 120 \times (0.5)^{3+7}\]\[P(X = 3) = 120 \times (0.5)^{10}\]\[P(X = 3) = 120 \times \frac{1}{2^{10}}\]\[P(X = 3) = 120 \times \frac{1}{1024}\]\[P(X = 3) = \frac{120}{1024}\]\[P(X = 3) = \frac{15}{128}\]\[P(X = 3) \approx 0.1171875\]したがって,試行回数 $n = 10$ , 成功確率 $p = 0.5$ の二項分布において,成功回数が $k = 3$ となる確率 $P(X = 3)$ は約0.117となる.
一方,負の二項分布を用いて3回成功する[表が出る]までに7回失敗する[裏が出る]確率は次のように計算される.1回目が裏,2回目が裏,3回目が表,4回目が裏,5回目が裏,6回目が裏,7回目が裏,8回目が表,9回目が裏,10回目が表というような場合である.\[P(X = 7) = \binom{7 + 3 - 1}{3 - 1} p^3 (1 - p)^7\]負の二項係数 $\binom{9}{2}$ は,\[\binom{9}{2} = \frac{9!}{2!(9-2)!} = \frac{9!}{2!7!}\]となる.階乗の計算をすると,\[9! = 9 \times 8 \times 7 \times 6 \times 5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 362880\]\[2! = 2 \times 1 = 2\]\[7! = 7 \times 6 \times 5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 5040\]これらを用いて,負の二項係数を計算する.\[\binom{9}{2} = \frac{362880}{2 \times 5040} = \frac{362880}{10080} = 36\]次に,$p = 0.5$ を用いて確率を計算する.\[\begin{eqnarray}P(X = 7) &=& 36 \times (0.5)^3 \times (0.5)^7\\&=& 36 \times (0.5)^{3+7}\\&=& 36 \times (0.5)^{10}\\&=& 36 \times \frac{1}{2^{10}}\\&=& 36 \times \frac{1}{1024}\\&=& \frac{36}{1024}\\&=& \frac{9}{256}\\& \approx & 0.03515625 \end{eqnarray}\]したがって,負の二項分布において成功回数 $r = 3$ ,失敗回数 $k = 7$ ,成功確率 $p = 0.5$の場合の確率 $P(X = 7)$ は約 0.035となる.
Mathematics is the language with which God has written the universe.