Haar測度
定義:
局所コンパクトな位相群 $G$ 上の
Haar測度は,以下の性質を満たす(左)不変な正則な
ボレル測度 $\mu$ として定義される.
- 左不変性:任意の $g \in G$ とボレル集合 $A \subseteq G$ に対して,\[\mu(gA) = \mu(A)\]
- 正則性:任意のボレル集合 $A$ に対して,\[\mu(A) = \inf\{\mu(U) \mid U \supseteq A\}\]$U$ は開集合.\[\mu(A) = \sup\{\mu(K) \mid K \subseteq A\}\]$K$ はコンパクト集合.
- 局所有限性:任意のコンパクト集合 $K \subseteq G$ に対して,\[0 < \mu(K) < \infty\]
- 非自明性:任意の非空開集合 $U \subseteq G$ に対して,\[\mu(U) > 0\]
つまり,
Haar測度とは,位相群(特に局所コンパクト群)上で定義される,群の構造に関連した不変な測度である.具体的には,群の「構造が変わっても測度が変わらない」性質を持つ.
局所コンパクトな群 $G$ において,一般には左Haar測度と右Haar測度は一致しない可能性がある.しかし,群がコンパクトである場合には,以下の理由により左Haar測度と右Haar測度は一致する.
- コンパクト性と不変性の相互関係:
コンパクト群では,測度空間全体で左不変性と右不変性が同時に成り立つ特性を持つ.具体的には,コンパクト性により,左Haar測度 $\mu_{L}$ を右不変に正規化することが可能となる. - 一意性の定理:
Haar測度はスカラー倍を除いて一意であるため,コンパクト群において適切に正規化すれば,左Haar測度と右Haar測度が同一の測度として表される.
コンパクト群上のHaar測度は有限測度
コンパクト群 $G$ は,位相空間としてコンパクトである群である.つまり,任意の開被覆に有限部分被覆が存在し、,任意の列が収束部分列を持つ性質を持っている.
コンパクト群のHaar測度は,群全体 $G$ に対して測度が有限であるという性質を持つ.
- Haar測度の局所有限性により,任意のコンパクト集合(ここでは群 $G$ 全体も含む)の測度は有限.
- 群 $G$ 全体がコンパクトであるため,Haar測度は $G$ 全体の測度 $\mu(G) < \infty$ を保証.
また,コンパクト群の場合,Haar測度を適切に正規化することによって, $\mu(G)=1$ のように規格化することも一般的である.これにより,確率測度として扱うことができる.
Haar測度の性質の違い
性質 | 局所コンパクト群のHaar測度 | コンパクト群のHaar測度 |
---|
存在と一意性 | スカラー倍を除いて一意 | スカラー倍を除いて一意 |
有限性 | コンパクト部分集合に対してのみ有限 | 群全体がコンパクトであるため、群全体の測度が有限 |
規格化 | 測度を規格化するには追加条件が必要 | $\mu(G) = 1$ に規格化できる |
左/右Haar測度 | 一般には一致しない可能性がある | 左Haar測度と右Haar測度は常に一致 |
Mathematics is the language with which God has written the universe.