summary:
従来のネットワークでは,各ネットワーク機器[ルータやスイッチ]が独立して制御を行っていたが,SDNではコントロールプレーン[制御層]を集中管理し,ネットワーク全体の挙動をソフトウェアで動的に制御できるようにする.このアプローチにより,ネットワークの管理が容易になり,柔軟なトラフィック制御,セキュリティ強化,リソースの最適化が可能となる.
SDNの概念は,2000年代初頭から研究されており,特にスタンフォード大学の研究プロジェクトがその発展に大きな影響を与えた.2004年には,同大学のEthaneプロジェクトにおいて,ネットワーク制御を集中化するという基本的なアイデアが提唱された.さらに,2008年にはスタンフォード大学の研究者によってOpenFlowが発表され,SDNの実現に向けた具体的なプロトコルが確立された.このOpenFlowは,ネットワーク機器とSDNコントローラの間の通信を標準化し,プログラム可能なネットワークの実現を可能にした.
2011年には,OpenFlowの普及を促進するために,Open Networking Foundation[ONF]が設立され,GoogleやFacebook,Microsoft,Ciscoなどの主要企業が参加し,SDNの商用化が進められた.2012年には,Googleが自社のデータセンターにSDNを導入し,ネットワークの最適化に成功したことが話題となった.この成功により,多くの企業がSDN技術の導入を検討し始めた.
SDNの主要な特徴として,まず制御とデータの分離が挙げられる.ルータやスイッチのデータプレーン[パケット転送処理]とコントロールプレーン[ルーティングやポリシー決定]を明確に分離することで,より効率的なネットワーク管理を実現している.次に,集中制御の仕組みがある.ネットワーク全体を管理するSDNコントローラを導入し,ソフトウェアベースで一元的に制御することで,ネットワーク管理の複雑さを軽減している.また,プログラム可能性も重要な特徴である.APIを通じて,動的にネットワークの設定や制御を変更できるため,ビジネス要件やトラフィック状況に応じた迅速な対応が可能となる.さらに,OpenFlowなどのオープンスタンダードの活用により,異なるベンダーの機器間での相互運用性が向上し,ベンダーロックインのリスクを低減している.
2020年代に入ると,SDNはさらに発展し,クラウド技術や5G,エッジコンピューティングと統合されるようになった.特に,SD-WAN[Software-Defined Wide Area Network]として企業ネットワークに広く導入され,柔軟なネットワーク制御を実現している.また,機械学習を活用したネットワーク最適化技術も登場した.
Mathematics is the language with which God has written the universe.