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データレイクは,大量の生データを保持し,機械学習,リアルタイム分析,データ探索などの用途に適している.一方で,データの管理や品質保証のための仕組みが必要となる.
データレイクのアーキテクチャは,一般的に分散ファイルシステム[HDFS等]またはクラウドストレージ[Amazon S3,Azure Data Lake Storage,Google Cloud Storage等]を基盤としており,コスト効率の高いストレージを活用することで,ペタバイト級の大規模データを管理することができる.データ形式としては,CSV,JSON,Parquet,Avroなどの様々なフォーマットに対応し,画像,音声,動画,ログデータなどのバイナリファイルも含めることができる.
データレイクの主要な特徴として,データの多様性があり,あらゆる種類のデータを格納できる点が挙げられる.また,スケーラビリティに優れており,データ量の増加に応じて柔軟に拡張できる.低コストストレージを活用するため,一般的に圧縮フォーマットや安価なストレージを使用する.処理の柔軟性も特徴の一つで,バッチ処理,ストリーム処理,対話的クエリ,機械学習など様々な処理方法に対応可能である.さらに,データ民主化を促進し,データサイエンティスト,アナリスト,開発者など様々なユーザーがデータにアクセスできる環境を提供する.
インターネットの普及により,データ量が爆発的に増加した.この時期,従来のデータウェアハウス[DWH]は構造化データの管理に適していたが,非構造化データ[画像,動画,ログデータ,SNSデータ等]の処理には限界があった.2004年にGoogleがMapReduceを発表し,分散処理技術が登場.これにより,2006年にはApache Hadoopが開発され,分散ストレージ[HDFS]を活用したビッグデータ処理が可能となった.
2010年頃,Pentahoの創設者James Dixonが「データレイク」という概念を提唱した.彼はデータウェアハウスを「ボトル入りの水[精製されたデータ]」,データレイクを「自然の湖[未加工データの集合]」に例えた.クラウドストレージ[Amazon S3, Google Cloud Storage]の普及により,安価でスケーラブルなデータ保存が可能となり,企業はHadoopやNoSQLデータベースを活用して大量の生データを保存し,必要に応じて処理する新しいデータ管理モデルを採用した.
Hadoopの複雑さや運用コストの問題から,企業はクラウドベースのデータレイクへ移行.AWS Lake Formation,Google Cloud Data Lake,Azure Data Lake等のクラウドネイティブなデータレイクサービスが登場し,管理が容易になった.また,データウェアハウスとデータレイクの融合を目指した「データレイクハウス[Data Lakehouse]」の概念が登場し,DatabricksのDelta LakeやSnowflakeのIceberg等が開発された.
ただし,データレイクには「データスワンプ[Data Swamp]」のリスクも存在する.これは,メタデータの不足,データ品質の問題,ガバナンスの欠如により,データレイクが整理されていないデータの集積場になってしまう状態だ.このリスクを回避するため,最近ではデータカタログ,データ系譜[Data Lineage],アクセス制御等のガバナンス機能を備えた管理されたデータレイク[Managed Data Lake]が重視されている.
また,データレイクとデータウェアハウスの利点を組み合わせたレイクハウス[Lakehouse]アーキテクチャが注目され,Delta Lake,Apache Iceberg,Apache Hudi等の技術が開発された.これにより,データレイクの柔軟性とスケーラビリティを維持しながら,データウェアハウスのトランザクション整合性やパフォーマンスの最適化も実現できるようになっていった.
Mathematics is the language with which God has written the universe.