仮想回線

summary:

仮想回線[VC: Virtual Circuit]とは,通信ネットワークにおいて,物理的な回線を専有することなく,論理的に確立される接続のことである.

データ転送の際に送信元と宛先の間で事前に経路を設定し,同一のパスを通じてパケットを送ることにより,通信の一貫性を保つ仕組みとなっている.

回線交換とパケット交換の中間的な方式として機能し,接続の確立時に経路が決定される点で回線交換に類似しながらも,ネットワーク資源を効率的に共有できる点でパケット交換の利点を備えている.

また,一連のパケットに関連付けられた識別子[VCI: Virtual Circuit Identifier]によって,複数の仮想回線が同一の物理回線上で多重化される.

仮想回線には,一時的な通信のために動的に設定と切断が行われるスイッチド仮想回線[SVC: Switched Virtual Circuit] と,長期間にわたって固定的に設定される 永久仮想回線[PVC: Permanent Virtual Circuit] の2種類が存在する.SVCはダイヤルアップ接続のように必要に応じて接続を確立するため柔軟性に優れるが,接続確立の各フェーズ[呼設定,データ転送,切断]に時間とシグナリングのオーバーヘッドを要する.一方,PVCはネットワーク管理者によって事前設定され,接続確立のオーバーヘッドがないため即時の通信が可能だが,経路が固定されているため障害発生時の耐障害性や経路変更の柔軟性に欠ける.

仮想回線の概念は,1970年代から発展したパケット交換技術に起源を持つ.初期のパケット交換ネットワークとして代表的なものに,X.25 がある.X.25は,不安定な通信環境を想定し,各ノードで仮想回線を用いてエラーチェックと再送制御を行いながら信頼性の高い通信を提供する方式であり,銀行のオンラインシステムや初期の公衆データ通信網などで広く採用された.その後,1980年代に登場した フレームリレー は,通信回線の品質向上を背景に,X.25の高いオーバーヘッドを削減し,エンドツーエンドでのエラー制御を端末に任せることで高速通信を可能にするために設計された仮想回線ベースの技術である.さらに,1990年代には ATM[Asynchronous Transfer Mode] が仮想回線の概念を発展させ,固定長セルと仮想パス[VP: Virtual Path]/仮想チャネル[VC: Virtual Channel]の階層構造を持つセルスイッチングを採用することで,音声・データ・動画を統合した高速通信と品質保証[QoS]を実現した.

現在では,インターネットの主流技術である IP[Internet Protocol] が仮想回線を用いない データグラム方式[コネクションレス型]を採用しているため,純粋なVCベースの通信は一般的ではなくなった.しかし,MPLS[Multi-Protocol Label Switching] などの技術では,仮想回線の考え方を応用し,ラベルスイッチングを用いたトラフィックエンジニアリングや高速な経路選択による効率的なデータ転送が行われている.また,トランスポート層の TCP[Transmission Control Protocol] では,コネクションレス型のIPの上で論理的な接続を確立するという仮想回線的な機能を提供している.さらに,VPN[Virtual Private Network]技術も,公衆ネットワーク上に仮想的な専用回線を構築する点で仮想回線の考え方を応用している.仮想回線は,通信の信頼性と効率を両立するために設計された技術であり,通信ネットワークの発展とともに形を変えながらも,その基本的な概念は現在も様々な形で活用され続けている.

Mathematics is the language with which God has written the universe.





















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