HIP

summary:

HIP[Heterogeneous-computing Interface for Portability]とは,AMDが開発した,GPU上で汎用計算[GPGPU]を実行するためのC++ベースのプログラミングインターフェースである.主にNVIDIAのCUDAに対抗する形で設計されており,異なるGPUアーキテクチャ間の移植性[ポータビリティ]を確保しつつ,高性能な並列計算を可能にすることを目的としている.

HIPの最も重要な特徴は,そのクロスプラットフォーム性にある.HIPAMDROCmプラットフォームの一部として機能するが,NVIDIAのGPUでも動作するよう設計されている.具体的には,AMD GPUではHIPコードはAMDの処理ユニット向けに直接コンパイルされ,NVIDIA GPUではHIPコードがCUDAに変換される仕組みになっている.この設計により,開発者は単一のソースコードでAMDとNVIDIAの両方のハードウェアをターゲットにできる.

AMDはGPGPU市場でNVIDIAに大きく遅れをとっていた.NVIDIAは2007年にCUDAを発表し,早期から科学計算や機械学習分野でのGPU利用を促進していた.AMDはこれに対抗するため,当初はOpenCLに注力していたが,OpenCLは複雑さと最適化の難しさからCUDAほど広く採用されなかった.2015年頃,AMDはHSA[Heterogeneous System Architecture]財団の取り組みの一環として,より効果的な戦略を模索し始めた.

その結果,2016年にAMDはROCm[Radeon Open Compute Platform]を発表し,その中核コンポーネントとしてHIPを位置づけた.ROCmはオープンソースのGPGPUエコシステムとして設計され,HIPはその核となるプログラミングモデルとなった.特筆すべきは,AMDがhipifyというツールも提供し,これによって既存のCUDAコードを自動的にHIPコードに変換できるようにしたことである.これはCUDAのエコシステムに依存していた既存のアプリケーションをAMD GPUに移行する障壁を大幅に下げる戦略だった.

HIPはCUDAと意図的に類似した構文を採用しており,カーネル関数の定義,メモリ管理,実行設定など,CUDAの主要概念とパラレルになっている.しかし,いくつかの重要な違いも存在する.例えば,HIPはCUDAのような独自のコンパイラを必要とせず,標準のC++コンパイラで処理できるよう設計されている.また,HIPのAPI呼び出しはエラーコードを返すのではなく,例外を投げるオプションも提供している.

特に2019年以降,HIPとROCmエコシステムは高性能コンピューティング[HPC]分野で注目を集めている.AMDのInstinct GPUシリーズは,いくつかの主要なスーパーコンピュータプロジェクト[Frontier,El Capitanなど]に採用され,これらのシステムではROCmとHIPが計算基盤として使用されている.

Mathematics is the language with which God has written the universe.





















サブワード Fivetran Airbyte NewSQL Open Table Format KubeDB Operator