summary:
従来の統合型WDM装置では,すべての機能が一体化していたのに対し,1FINITYは用途に応じてLTSといった異なる機能ブレードを自由に選べるアーキテクチャとなっており,CAPEX・OPEXの最適化を実現している.
1FINITYは2015年に最初の製品シリーズが発表され,富士通が推進する開かれたオープンネットワークアーキテクチャの一環として位置づけられている.当時から急増する動画トラフィック,クラウド接続,モバイルバックホールの需要に対して,従来のモノリシックな光伝送装置では柔軟性が不足していたため,ディスアグリゲート型設計が注目された.その流れの中で,1FINITYは世界的にも先進的な設計思想を持ったWDM伝送装置として導入され始めた.
技術的には,1FINITYは主に3つの主要シリーズで構成されている.Lシリーズ[Lambda]はROADM,WDM,波長多重伝送など,光伝送インフラの中心部分を担い,特にL900/L920ではC+LバンドのROADMに対応し,最大76.8Tbps超の伝送能力を提供する.Tシリーズ[Transport]は100GbE~800GbE超のデータの長距離伝送を担うトランスポンダーモジュールで,例えばT900/T250などは,標準OTN,FEC,コヒーレント変調などに対応しており,メトロ・ロングホール両方に適応する.Sシリーズ[Switch]は10GbE~400GbEを収容する低レイテンシなL2スイッチング機能を持ち,5Gフロントホールや企業ネットワーク構成などにも使用される.
1FINITYの特徴的技術としては,富士通製のSDNコントローラVirtuora NCに対応し物理層を含む統合ネットワーク制御が可能なSDN連携,プログラマブルな設定やモニタリングが可能なNETCONF/YANG対応,必要最小限の装置構成で導入が可能であり導入時の初期コストを削減するディスアグリゲーション設計,1RU構成によりラックスペースと消費電力を最適化する省スペース・省電力などが挙げられる.
市場では,1FINITYはCienaのWaveserverシリーズ,InfineraのGX/ICEシリーズ,Nokiaの1830 PSSシリーズなどと競合しているが,特に国内市場では高い信頼性と富士通によるサポート体制により,通信キャリアや公共系ネットワークでの採用例が多い.また,設計の柔軟性やSDN連携のしやすさという点で,GoogleのJupiterのような光インフラのコード化思想にも適合する.
1FINITYはプログラマブルな点も特徴としており,従来の光伝送装置が持っていた静的かつ手動中心の構成管理から脱却し,ネットワーク制御の自動化・柔軟化・標準化を前提に,ソフトウェアインタフェースを通じて構成・運用を可能とする設計思想を採用している.これは,1FINITYが物理層[Layer 0]を含めてインフラをコードで制御する現代的なネットワーク運用モデルと整合するために実装された機能群であり,通信キャリアやクラウド事業者にとって重要な価値を持つ.
1FINITYのプログラマビリティの中核は,NETCONF/YANGベースの標準インタフェースにある.これにより,ユーザーはベンダー固有の独自コマンドに依存することなく,YANGでモデル化されたデータ構造に基づいて,ネットワーク構成や状態情報をプログラマティックに取得・変更することができる.この操作はPythonをはじめとした任意のプログラミング言語から実行可能であり,帯域変更,波長再割当,ROADM構成の変更,トランスポンダ設定の調整といった物理層操作もコード化が可能となる.
さらに,1FINITYは富士通製SDNコントローラVirtuora NCとの連携により,マルチレイヤー[L0〜L2]にまたがる統合制御を実現している.Virtuora NCは意図ベース[Intent-Based]のネットワーク記述モデルを採用しており,ユーザーが2地点間に10Gbpsの低遅延パスを確保せよといった論理的要求を発行すると,コントローラが最適な光経路,波長,スイッチ構成を自動的に計算・実装する.この過程で1FINITYはプログラマブルな物理リソースとして機能し,リアルタイムな構成変更やトポロジ再設計を可能にする.
技術的発展として,1FINITYはNETCONFに加え,RESTCONF,gNMI[gRPC Network Management Interface]などのオープンAPIへの対応を拡充しており,YANGモデルとの組み合わせにより,光インフラをInfrastructure as Codeの領域に統合することができる.これは,クラウドネイティブ環境やDevOps手法が求められる現代において,1FINITYが従来型の光通信装置と一線を画す運用柔軟性を提供する根拠となっている.
1FINITYの各ブレードは物理的には分離構成だが,SDNインタフェース上では抽象化され,統合的な光リソースプールとして扱われる.この抽象化リソースに対し,ユーザーはAPI経由で波長パスの構成,FEC有効化,ポート状態変更などの命令をプログラムによって完結できる.
本質的に,1FINITYのプログラマビリティとは,単なるコマンド自動化の範疇を超え,ネットワーク機能そのものをソフトウェア制御可能なオブジェクトとして扱う能力にある.これは運用自動化,動的リソース割当,自律的障害復旧といった,次世代光ネットワークの要件に応える解決策であり,従来の静的ネットワーク構成パラダイムからの根本的転換を象徴している.
Mathematics is the language with which God has written the universe.