デルタ関数

デルタ関数[delta function]というのは量子力学の創設に関わったイギリスの物理学者ディラック[Paul Adrien Maurice Dirac;1902/08/08-1984/10/20]が考案した「新しい関数」です.

【定義】デルタ関数[delta function]

$x=0$ に位置するデルタ関数[delta function]を $\delta(x)$ とし,$x=a$ に位置するデルタ関数[delta function]を $\delta(x-x)$ と表したとき,$\alpha \verb|<| a \verb|<| \beta$ に対して,\[\int_{-\infty}^{\infty}\delta(x-a)dx=1\]\[\int_{\alpha}^{\beta}\delta(x-a)dx=f(a)\]という関係を満たすことがデルタ関数[delta function]の定義となります.

デルタ関数[delta function]は高さが無限に高い一方で,幅は無限に小さく,積分すると面積が $1$ になる関数と言えます.

ちなみに,デルタ関数[delta function]は通常の関数とは異なるので超関数[distribution,generalized function]とよばれます.1点で値が $\infty$ になっても,その1点を含む任意の区間での積分の値が有限であればよいという形で関数を定義し直したものが超関数[distribution,generalized function]です.

また,デルタ関数[delta function]ガウス分布[Gaussian distribution]の確率密度関数の分散を $0$ へ限りなく近付けて,その特徴を表したものと考えることもできます.

このデルタ関数[delta function]階段関数[step function]の微分となっています.

【定義】階段関数[step function]

以下の式で定義される $theta$ を階段関数[step function]もしくは単位階段関数[unit step function]といいます.\[\theta(x-a)=\begin{cases}0 & x \verb|<| a\\1 & x \verb|>| a \end{cases}\]

この階段関数[step function]を $x$ で微分するとデルタ関数[delta function]となります.\[\frac{d\theta(x)}{dx}=\delta(x)\]

ここで,デルタ関数[delta function]の定義で出てきた,\[\int_{\alpha}^{\beta}f(x)\delta(x-a)dx\]を計算してみます.

まず,部分積分を用いると,デルタ関数[delta function]を積分すると階段関数[step function]となるので,\[\left[f(x)\theta(x-a)\right]_{\alpha}^{\beta}-\int_{\alpha}^{\beta}\frac{df(x)}{dx}\theta(x-a)dx\]となります.

ここで,階段関数[step function]は $x \verb|<| a$ では $0$ となり,積分範囲も $\alpha$ から $\beta$ までであったものが,$a$ から $\beta$ までとなるので,\[\begin{eqnarray}\int_{\alpha}^{\beta}f(x)\delta(x-a)dx &=& f(x) - \int_{a}^{\beta}\frac{df(x)}{dx}\\&=&f(\beta)-\left[f(x)\right]_{a}^{\beta}\\&=&f(\beta)-f(\beta)+f(a)\\&=&f(a)\end{eqnarray}\]となります.


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