2次方程式の解の公式
2次方程式は古代バビロニアや古代ギリシアにおいても解かれていたとされる.現在の解の公式に相当するものは8世紀から12世紀の間にインドで編み出され,アラビア半島を経由してヨーロッパに伝えられたと考えられる.もっとも,その方法は2次方程式を文字式で表現した上で数式を変形して解を求めていくという現代の方法とは異なったものであった.
2次方程式の解の公式を現在知られている形にしたのは16世紀のフランスの法律家にして数学者であり代数学の父と呼ばれるフランソワ・ヴィエト[François Viète;1540-1603/2/13].
\[ax^{2}+bx+c=0 \]の解の公式\[x=\frac{-b \pm \sqrt{b^{2}-4ac}}{2a} \]を導出する.\[ax^{2}+bx+c=0 \]を\[ax^{2}+bx=-c \]と変形する.\[\begin{eqnarray} a\left(x^{2}+\frac{b}{a}x\right)&=&-c \\ a\{\left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}-\left(\frac{b}{2a}\right)^{2}\}&=&-c \\ a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}-a\frac{b^{2}}{4a^{2}}&=&-c \\ a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}-\frac{b^{2}}{4a}&=&-c\\ a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}&=&-c+\frac{b^{2}}{4a} \\ &=&-\frac{4ac}{4a}+\frac{b^{2}}{4a} \\ &=&\frac{b^{2}-4ac}{4a} \end{eqnarray}\]つまり,\[\begin{eqnarray}\left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}&=&-c+\frac{b^{2}}{4a}\\&=&\frac{b^{2}-4ac}{4a} \times \frac{1}{a} \\&=&\frac{b^{2}-4ac}{4a^{2}} \end{eqnarray}\]\[\begin{eqnarray} x+\frac{b}{2a}&=&\pm \sqrt{\frac{b^{2}-4ac}{4a^{2}}}\\&=&\pm \frac{\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a} \end{eqnarray}\]さらに式を変形して,\[\begin{eqnarray}x&=-\frac{b}{2a} \pm \frac{ \sqrt{(b^{2}-4ac)} }{2a} \\&=\frac{-b \pm \sqrt{b^{2}-4ac}}{2a} \end{eqnarray}\]
なお,1次方程式\[ax+b=0 (a \neq 0) \]の解の公式は\[x=-\frac{b}{a} \]となる.
また,3次方程式の解の公式はカルダノの公式[Cardano's formula],4次方程式の解の公式はフェラーリの公式[Ferrari's method]として知られている.
さらに,5次以上の次数の一般の方程式には,アーベル=ルフィニの定理[Abel–Ruffini theorem]から,解の公式は存在しないことが分かっている.これは,標数[characteristic]$0$の体上において,代数方程式が四則演算及びべき根で解けることと,その方程式のガロア群[Galois Group]が可解群となることが同値であるということを用いて証明される.
Mathematics is the language with which God has written the universe.